「痩せてから」が一番の機会損失だった
——がんを越えて体と向き合う私が、結婚相談所データで気づいたこと
私も似たことを、別の文脈で何度もやってきた人間です。だから今日は、そのループを精神論じゃなくてデータで崩しにいきます。
「痩せてから」——その先延ばしの正体
朝、着替えようとしてクローゼットを開く。手が止まる。去年まで着ていたシャツに、腕を通してみる。ボタンが締まらない。そっと戻して、また「とりあえず着られる服」を選ぶ。
旅行の写真を撮るとき、気づけばいつも後ろに回っている。「一緒に撮ろう」と言われると、笑顔で「撮る側やるよ」と言いながら、カメラの後ろに隠れる。
友人から「一緒に婚活イベント行かない?」と誘われた。断る理由を探した。「今ちょっとバタバタしてて」と言いながら、本当の理由は別のところにあった。痩せてから行こう、と思っていた。痩せてから、本気を出そう。痩せてから、ちゃんとした自分になってから、動き出そう。
その「痩せてから」を待ち続けて、気づいたら何年も経っていた。リバウンドのたびに自分を責めた。「またか」「意志が弱い」「情けない」。そのたびに少し、自信を削られた。そして「痩せてから」はまた遠のいた。
このループに心当たりがある人に、今日は話しかけたいと思っています。
精神論は要らない。「自分を好きになって」「ありのままで」も、何十回も聞いてきた言葉だと思う。だから今日はデータを持ってきました。数字で崩せるものは、数字で崩した方が早い。
32,619人が教えてくれた、意外すぎる事実
IBJ結婚みらい研究所が公開した調査があります。国内最大規模の結婚相談所グループが蓄積した成婚・退会データを大規模に分析したもので、女性32,619名、男性27,306名のデータを対象にしています(出典:IBJ結婚みらい研究所「成婚白書」)。
この調査が「体型と成婚率の関係」を正面から分析しているのですが、その結果は、多くの人の思い込みを崩すものでした。
女性のBMI別成婚率(IBJ成婚白書より)
BMI 18〜26未満の範囲では、どの体型でも成婚率の差は2〜3%程度。「モデル体重・美容体重」にあたるBMI18〜20の成婚率は、むしろ他の体型帯より控えめな結果だった。
成婚した女性の約6割が中央寄りの体型帯に集中しているのも事実。ただしこれは「この体型でないと成婚できない」という足切りラインではなく、そもそも母集団の分布がそこに集まっているだけで、明確な体型の壁は存在しない。
※出典:IBJ結婚みらい研究所「成婚白書」女性32,619名、男性27,306名のデータより
BMI26未満なら、どの体型でも成婚率はほぼ変わらない。
これが何を意味するか、少し立ち止まって考えてほしいのです。
「ちょっと痩せたら、相手の見る目が変わるはず」——婚活市場において、それは幻想だった。少なくとも、このデータはそう言っている。BMI20を切る細さにしても、BMI25に近くても、成婚率の差はたった2〜3%。誤差の範囲と言っていい。
では、男性は何を見ているのか。
体型の数字ではなく、その人が醸し出す空気を見ている、と私は思っています。「この体型が好み」ではなく、「この人といると心地いい」「一緒にいて楽しい」「この人は自分に自信を持って生きている」——そういうものを、人は感じ取る。
自信のある人は、体型に関係なく、輝いて見えます。逆に、どれだけ体型を整えても、「私なんて」という空気をまとっていたら、それが相手に伝わる。婚活の場で一番強いのは、自分を好きでいられる人なのかもしれない。
データが示しているのは、まさにそのことだと私は読んでいます。
でも正直に言う。男の私には、体型が効く
ここで都合よくまとめることは、私にはできない。
なぜなら、同じ調査の男性データを見ると、女性とは全く違う結果が出ているからです。
男性のBMI別成婚率(IBJ成婚白書より)
男性はBMI20〜22で成婚率38.3%をピークに、数値が上がるにつれて右肩下がり。女性と違い、体型が成婚率に直結するという結果が出ている。
※出典:IBJ結婚みらい研究所「成婚白書」
私はデータ上、不利な側に位置しています。それは認める。「体型なんて関係ない」と書いたら嘘になるから、そうは書かない。
でも、だからこそ言えることがあります。
男性のデータが示しているのは「体型が有利に働く」ということであって、「痩せてから始めよう」の正当性ではない。痩せることと、今すぐ動くことは、矛盾しない。「痩せながら動く」ことはできる。「痩せてから動く」は、ただの先延ばしの言い訳になっている場合がほとんどです。
男性であれ、女性であれ。「痩せてから動く」という選択そのものが、最大の機会損失だと思っています。
私が体型と格闘してきた日々のこと
少し、自分のことを話させてください。
私は子供の頃から、太っていることを自虐で笑いに変えてきました。自分で自分をネタにして、先に笑わせる。いわば「笑いの鎧」を着て生きてきた。でも本当は、誰かの前で、ネタにせずに、ただ「辛い」と素で言えたことが、一度もなかったんです。
人生で一番太っていたのは、事業に失敗して、大きな借金を背負った時期でした。投資の失敗、連帯保証、信じていた人の裏切り。精神的に追い詰められるほど、体は膨らんでいった。体重と借金が、同じカーブで増えていったんです。
痩せようと、一生懸命頑張った時期もあります。食事制限して、運動して、記録して。でも面白いことに、頑張れば頑張るほど、リバウンドした。力を入れるほど、体は緊張する。緊張するほど、変化は止まる。
逆に、ダイエットを「頑張ること」そのものをやめたとき、はじめて痩せられました。
「頑張るほど太る。頑張らない方が痩せる」。これは精神論じゃなくて、自分の体と財布で証明してしまったパラドックスです。周りの目や「こうあるべき」という思い込みが、自分の本当の声をかき消していた。その力みが抜けたとき、体も人生も、ようやく動き出しました。
そして数年前、大腸がんのステージ3が見つかりました。
手術を受けて、ストーマ(人工肛門)を付けました。外の袋に排泄物が溜まる生活が続いた。ストーマを外した後も、腸の機能は完全には戻りません。今も食物繊維を制限しながら、毎日、自分の体と向き合っています。
手術台で、麻酔が落ちていく直前。頭に浮かんだのは、仕事のことでも、体型のことでもありませんでした。家族の顔だった。
がんの手術のあと、初めて家族と食卓を囲んだとき。一番おいしかったのは、特別なごちそうじゃなくて、ただの「ごはん」でした。妻が安心した顔をしていて、その顔を見て、私も安心できた。「ありがとう」と、ようやく言えた。あの一杯のごはんが、今の私の原点です。
あれだけ気にしていた体型のことが、あの瞬間、ずいぶん小さなことに思えました。
——とはいえ、正直に言います。痩せた今も、「もっと痩せなきゃ」と思う自分が、まだいます。周りの目を気にする癖は、私にとって一番最後まで残っている呪いで、完全には解けていない。だから私は「克服しました」とは言いません。「解けました」と語る先生じゃなくて、「一緒に解いていこう」と隣を歩く人間でいたいんです。
「痩せてから」待ちの間に、何が通り過ぎていくか
話を婚活データに戻します。
女性32,619名のデータが示したのは、BMI26未満なら体型による成婚率の差は2〜3%にすぎないということでした。
これを裏から読むと、こういうことになります。
「もう少し痩せてから婚活を始めよう」と先延ばしにしている間、出会えたはずの相手が通り過ぎていく。体型を5kg絞っても、成婚率は数%しか変わらない。でも婚活を1年先延ばしにしたら、年齢は1歳上がり、出会いの機会は単純に1年分減る。
どちらの損失が大きいか、明らかです。
「痩せてから」という選択は、リスクの回避に見えて、実は最大のリスクを取っている。今の体で傷つくことを避けようとして、時間という、二度と取り戻せないものを差し出している。
BMI 18〜26未満の女性では、どの体型でも成婚率の差は2〜3%程度にとどまった。 出典:IBJ結婚みらい研究所「成婚白書」
https://www.ibjapan.jp/mirai-lab/seikon-hakusho/738/
この数字が言っているのは、「あなたは待たなくていい」ということです。
あなたが本当に欲しかったのは、体重の数字じゃない
何度もリバウンドして、そのたびに自分を責めてきた人に聞きたい。
「痩せたら何が手に入ると思っていましたか?」
きれいな体型ですか? 憧れの洋服ですか?
たぶん、その奥に、もっと根本的なものがあったはずです。
「自信を持って、人の前に出たい」。
「体型を気にせず、笑っていたい」。
「この体でも、動いていい、と思いたい」。
欲しかったのは、体重の数字ではなく、「許可」だったんじゃないか、と私は思っています。自分に「動いていいよ」「出かけていいよ」「あなたのままで、十分だよ」という許可を出せる状態。
そしてその許可を、ずっと体重計の数字に求めてきた。「あと3kg落ちたら、自分を許可しよう」と。
でも、それは逆でした。
自分への許可を出すのに、体重の数字はいらない。データがそれを示してくれている。BMI26未満ならどの体型でも成婚率はほぼ変わらないというのは、つまり「今の体で動いていい」というデータが出た、ということだから。
「失敗も、リバウンドも、全部財宝になる」というのが、私の考え方です。
何度も体型で悩んできた経験は、あなたを弱くしていない。同じように悩んでいる人の気持ちを、誰よりも深くわかれる人間にしてくれている。その経験を持ったまま、動き出した人間の言葉は、まっすぐ刺さります。
凸凹のまま、夢中に生きる——それが私の北極星です。完璧になってから動くんじゃなくて、凸凹のままで動く。体型も、人生も、同じだと思っています。
一人で抱え込まずに、AIと対話してみる
ここまで読んで、「頭ではわかった。でも、長年染みついた『痩せなきゃ』の思い込みは、そう簡単には消えない」と感じた人もいると思います。
その通りです。私自身、いまだに完全には解けていない。
ただ、この堂々巡りから抜ける助けになっている方法が、一つだけあります。AIと対話することです。
「痩せなきゃ」という思いは、一人で抱えていると、頭の中でぐるぐる回り続けます。周りの目、「こうあるべき」という思い込み——私が「左脳の妄想」と呼んでいるものが、自分の本当の声をかき消してしまう。
そんなとき、AIに話しかけてみるんです。「私は体型がずっとコンプレックスで」「痩せたら、何が手に入ると思っているんだろう」。誰かに言うのは恥ずかしい本音を、AIになら、そのまま打ち明けられる。
AIは否定しません。疲れません。深夜でも、何度同じ話をしても、ちゃんと聞いて、問いを返してくれる。「それは本当は、何を求めているんですか?」と。
その問いに答えていくうちに、見えてきます。「ああ、私が欲しかったのは体重の数字じゃなくて、自信だったんだ」と。一人では堂々巡りだった思考が、壁打ちの相手がいるだけで、すっと整理されていく。
コツは、立派なことを話そうとしないこと。かっこ悪い本音を、そのままぶつけていい。むしろ、その「素の弱さ」を言葉にできたとき、呪いは少しずつほどけていきます。私自身が、弱さをさらけ出したときに初めて前に進めた人間なので、これは断言できます。
私自身、頭に浮かんだことを紙に書き出して、AIと対話する時間を大切にしています。そうやって左脳の力みを抜いてから動くと、不思議と、体も気持ちも軽い。完璧に解決する魔法ではないけれど、「一人で抱え込まない」ための、確かな相棒です。
明日、一つだけ試してほしいこと
最後に、一つだけ具体的な提案をします。
「痩せてから始めよう」と思っていることを、一個だけ選んでください。婚活でも、誰かに会うことでも、着たかった服を着ることでも、参加を迷っているイベントでも、なんでもいい。
その「一個」だけを、今の体で試してみてください。
全部を変える必要はない。一度に全力を出す必要もない。ただ、「痩せてから」を「今の体で」に置き換えて、一歩だけ踏み出してみる。それだけです。
体型が整ってからじゃないと動けない理由を、データが崩しにきている。あとは、自分が自分に許可を出せるかどうかだけです。
私は今も、大腸がんを越えて、食事制限をしながら、凸凹のまま夢中に生きています。完璧な状態なんて、たぶん一生来ない。でも動いている。なぜなら、動き続ける理由の方が、止まる理由よりずっと大事だと知っているから。
あなたにも、動き続ける理由が、きっとあるはずです。
体型より大事なことが、あなたにはある。リバウンドした回数も、鏡の前で躊躇した時間も、全部、次に踏み出すための財宝だ。今のあなたのままで、動き始めていい。私はそう思っている。
※本記事で引用したデータはすべてIBJ結婚みらい研究所「成婚白書」(https://www.ibjapan.jp/mirai-lab/seikon-hakusho/738/)に基づいています。調査対象は結婚相談所IBJの会員データです。本文中の体験はひろくん(田中啓之)本人のものです。





